R61BOYS 中央分離帯 2014.12.19 in store

01: 61mojo 02: CustomerCenter 03: ton de bring 04: skit ~夜~ 05: LastDelay 06: Poison City pt3 07: yataro FM 08: skit2 ~Wall.E~ 09: fit 10: heisei sleep

 今はもうなくなってしまったが、シカゴとサンタモニカを結ぶルート66は「アメリカのメイン・ストリート」と呼ばれ、どこへでも行ける自由の象徴、成功の象徴としてポップ・カルチャーにも愛されたアメリカ初の国道の一つである。それに対して、R61こと伊勢原街道は、神奈川県の平塚と伊勢原を平坦な直線で結ぶ全長10キロほどのなんのことはない県道だ。その道は象徴的な意味でどこへ向かっていくのだろうか。
 さきごろ、SoundCloudでBushmindのトラックに乗せ、スケーターやブッキッシュな音楽好きが集う綱島の古書店、Feever Bugについて歌った「FEEVER BUG」のフリーダウンロードが話題となったヒップホップ・グループ、R61 Boys。彼らのファースト・アルバムは、一聴すれば、その道がどこにも通じていないことはよく分かる。トラックに象徴されるこの作品の徹底したヌケの悪さは、世界各地のリアルとヴァーチャルの狭間でブルーとグリーンのエージェントが激しい暗闘を繰り広げているような2014年において、かなり突出している。
 しかし、都会の高揚感や空虚さとも地方のレイドバック感や沈降感とも違う郊外の生ぬるさ、時間をかけて、全てがゆっくり溶けていく様を乾いたユーモアと内々にしか分からないスラングを交えて描き出す彼らについて、その実体は謎に包まれている。メンバーはトラック・メイカーのBacon以下、virgnia smell、ヤマーキーボーン、ケロピ、まーくん、DJ 283からなる6名。江ノ島OPPA-LAにて毎月第三金曜に行われているHiratuka Decorder主宰のパーティ『DOGBITE』をホームに活動をしているとか、別動グループであるHoodiesがCD-Rで一枚のEPをリリースしているとか、はたまた、メンバーは伊勢原に住んでいないらしいとか、断片的な情報から浮かび上がるグループのイメージは曖昧なままだ。しかし、何がホントで何がウソなのか、非常に混沌とした社会状況に呼応するかのように、この作品の気味が悪いくらいに心地良いヌケの悪さや曖昧さは非常にしっくり来る。どこにも向かわない、ただ、そこにある異形のヒップホップ。その静かな衝撃はじわじわとあなたを浸食するはずだ。

text by 小野田雄